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古内東子 『フツウのこと』

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30超えた私の様な男が古内東子を好きだというと、奇異に思われるかもしれないが、古内東子は譲る事の出来ない私の大好きなミュージシャンでありコンポーザーである。私が最初に彼女の存在を知ったのは1995年に発売された『Strength』というアルバムがキッカケである。デビッド・サンボーンをはじめ、スティーブ・ガッドにブレッカ・ーブラザース、ボブ・ジェームスにウィル・リー・・・、とダイアンリーヴスのアルバムですら、これだけのメンバーは揃わないだろうと思われる、ジャズ・フュージョンファンには、にわかには信じられないメンツが揃ったこのアルバムで、これら蒼々たるメンバーとガチンコで五分に渡り合う技と度胸を見させてもらって以降、古内東子の存在は私の中で極めて重要な位置を占めるようになった。

このアルバム以降、古内は『Hourglass』『恋』『魔法の手』TVドラマのサントラである『オトナのオトコ』とクオリティの高いアルバムを提供し続け、またTVドラマに使われた『誰より好きなのに』がシングルヒットして以降は、セールスが内容に追いつく形にもなり、個人的には大変嬉しく思っている。ただセールス的な意味合いも手伝い世間的なイメージとして古内のアルバムが女性向きと思われがちなのは、到底私には納得できない。『素晴らしい音楽』が好きな人ならば是非とも聞いて頂きたいと切に願う次第だ。

今回久し振りの新作となった『フツウのこと』は、ここ数作R&Bを主体とした打ち込み系の音作りに傾倒していた彼女が、前作『10stories』でその予感を漂わせていたものの、本格的に彼女本来のフィールドであるアコースティックな世界に戻ってきたなぁと実感させる出来上がりとなっている。日本のポップスフィールドにいるミュージシャンにしては、世界のミュージックシーンの流れを無理なく自然のままに咀嚼出来る力を持つ稀有なコンポーザーというのが私の古内東子評だが、今回のアルバムを聞いて尚更その思いを強くする。

昨年のカサンドラ・ウィルソンの新作以降、明らかにアコースティックサウンドの復権が世界のリアルミュージック(セールス面でない真のポップス、ロック、ジャズフュージョンのフィールドを指す私の造語)シーンのトレンドとなりつつあるが、その傾向とモノの見事にリンクしている。しかもそれが単に流行にのっかているという次元でなく、このレンジに到達する為に必要な過程を経た後だけに、尚の事説得力を持つ。

吉田美奈子や大貫妙子らの正統な後継者として、彼女の存在が明確に浮かび上がってきたのが聞き終えた瞬間の感想だ。今まで以上に散文的な詩の世界観も素晴らしいし、何より生音にこだわったバックのサウンドの充実感。丁寧なボーカルアレンジ、オトナが聞く極上のポップス、改心の一枚だ。

  by mf0812 | 2004-03-25 04:39 | 音楽

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