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HOOTERES 『NERVOUS NIGHT』

HOOTERS 『NERVOUS NIGHT』

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ジャズの帝王、マイルス・デイビスの墓碑には、ある曲の譜面が刻んである。マイルスが晩年愛して止まなかったその曲のタイトルは「TIME AFTER TIME」言わずもがな、この曲はシンディー・ローパーが1983年に出した「ハイスクールはダンステリア」の中に収められているバラードの名曲である。

マイルスはこの曲を愛し、事ある毎にステージでこの曲を演奏した。私も観に行ったよみうりランドイーストで行われたマイルスのライブ「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」内でのパフォーマンスでもクライマックスにこの曲を演奏していた。夏の終わりの風の中、この曲を全身で浴びた思いは未だ私の中に残っている。

マイルスは、70年代までのスタンダードな流れから一変し、80年代になるとベーシストのマーカス・ミラーを迎えて作った名盤「TUTU」に代表とされるアグレッシブなスタイルに変貌を遂げたのだが、このマイルスの行動は、当時のコアなジャズファンには結構厳しい反応だった様だ。マイルスファンを自認するウィンストン・マルサリスですら、あるインタビューでそうしたマイルスの後期の作品群を否定していたのだが、マイルスが死の瞬間まで「現在進行形」のジャズメン足りえた、そしてジャズの世界だけなく全ての音楽の世界において帝王として君臨したり得たのはこの80年代の作品があったからこそである。

死後10年以上たった今、80年代マイルスが遺した作品は脚光を浴びている。マイルスのアプローチに時代が追いついていなかったという事であろうか。数年前、現ジャズ・フュージョン界における最高峰のボーカリストの一人である、カサンドラ・ウィルソンは、自ら敬愛するマイルスに捧げるトラヴェリング・マイルスなるトリビュートアルバムをリリースしたが、その中でカサンドラは、マイルスの魂を最も表現する曲としてこの「TIME AFTER TIME」を選んで歌っている。

さてその名曲「TIME AFTER TIME」の作曲者エリック・バジリアンとロブ・ハイマンは、シンディーローパーのデビューアルバムの殆どの音作りに関与していた。あのアルバムのクオリティーは彼らの力によるところが大きい。いやシンディーだけではない。エリック・バジリアンという人はクリエーターとして大変優れたミュージシャンであり、最近ではビリー・マイヤーズのデビューアルバム「グロウイング,ペインズ」、グラミー賞で新人賞を獲ったジョアン・オズボーンの「リフレッシュ」など、シンディー以来、数多の優れた新人女性シンガーのデビューを手掛けている。

そんなエリックとハイマンが在籍していたバンドがフーターズ。フーターズは1978年に米国フィラデルフィアで結成された5人編成のロック・バンドで80年にメジャーレーベルの会社からデビューするが83年に解散。ニューヨーク周辺で各自が活動を続ける中、先に挙げたシンディ・ローパーのレコーディングでメンバーが再会し翌年再始動。スピード感あふれるロック・サウンドがベースだが、トラディショナル感覚のフィドラやアコーディアオン等の楽器演奏を加える個性的な音楽スタイルが彼らの特徴でもある。 そのフーターズのデビューアルバムがこのナーバスナイト。朝までダンス、デイバイデイなど名曲ズラリ。また80年代後半に出した「サテライト」ではトラディショナルフォークの名曲である「500マイル」をカバーしたが、当時の中国で起きた天安門事件に抗議する内容に一部歌詞を修正して発表するなどという気骨溢れる側面もある。しかし何と言ってもフーターズの魅力は、キャッチーなメロディーとタフな演奏力。ボリュームを目一杯上げて楽しみたい曲が揃っている、このファーストアルバムを推薦する次第だ。

  by mf0812 | 2004-08-27 15:13 | 音楽

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