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日々雑感  8/10 イラク戦争、最悪のシナリオ

NIKKEI NET:NY原油上昇、最高値に迫る

このニュースが指し示す事は唯一つ。「イラク戦争は失敗だった」という事。中東における石油利権を把握し、オペックでなくアメリカが世界の原油価格のイニシアティブを握る。このシナリオがこの戦争を仕掛けた政権中枢にいるネオコンの暴走をアメリカの保守系エネルギー関連大企業が必死にそして懸命に支えた大きな理由である。

アメリカはこの戦争では、既に捕虜人質虐待問題で道義的に、大量破壊兵器が見つからず国際政治的に、そしてこの原油価格の青天井状態においていよいよ経済的にも敗北した。残る勝ち負けは、国内政治的な勝ち負けのみであるが、それも経済的に負けた事でいよいよ怪しくなってきた。

主権譲渡したと言えども実際のイラクは、アメリカとイギリスが主導権を握っているのは間違いない。ビン・ラディンとは何も関係の無い(むしろ敵対関係に近かった)イラク・フセイン体制を「テロとの戦争」という名目で潰した訳だが、ここで一つ教訓を提示したい。去年の7月にホームサイトである「競馬ジャーナル日記」でも触れた、アメリカ元国務長官マクナラマが与える教訓についてである。

今からもう30年前。あのアメリカの悪夢といわれるベトナム戦争があった際の正に当事者でケネディの懐刀でもあったのがロバートマクナラマ元国防長官である。その彼が一昨年と去年、立て続けに長き沈黙を破りベトナム戦争回顧録を出版した。それが「マクナラマ回顧録」と「果てしなき論争」なのだが、この両方の書物の中でマクナラマは、かのベトナム戦争が失敗に終わった原因を次のように挙げてる。

①軍事経済力のみで戦後の国家復興が可能だと判断した
②米軍軍事力限界点の見誤り、
③一国主義による外交政策の強引な展開。
④ドミノ理論と呼ばれる外交戦術が誤りであった点

完全な失敗に終わった「マクナラマズ・ウォー(米国政府関係者が呼んだベトナム戦争の別名)」であるが、そんなマクナラマでも「核爆弾の先制攻撃による使用の禁止」という当時のNATO戦略にはなかった概念を策定し、アメリカの軍事作戦に大きな歯止めを掛けた功労者でもある。ここでマクナラマが提示している「ベトナムの失敗」は、そのまま「イラクの失敗」と置き換えていいだろう。月日は流れ、時代も環境も変わったはずなのに、戦争の質が何も変わらないというのも虚しい。JFKの時代から今のブッシュの時代まで、アメリカ社会の根底に流れている「ある種の人々による狂信的な思想」は何も変わらず侵されずにあるようで、こうした狂信的な考えが、パンドラの箱を平気で開けてしまう。

クルド民族問題を不用意に触れたが故にトルコの内政にまで影響を与え、イラクの次はイランに狙いを定めたが故に周辺諸国に余計な緊張を強いらせ、大義なき戦争を仕掛けたが故にイスラエルの暴走に言質を与え、アラブリ-グの結束を違う方向に走らせ、その結果が原油価格の青天井である。

先に述べたように、アメリカイギリスの連合国は、道義的に経済的に敗北した。残すは、政治的な雌雄の決着のみである。その最後の闘いとして、ここ数日サドル師殲滅に全てを賭けているのが現在のイラクの状況だろう。ファルージャの惨劇を髣髴とさせる民兵の犠牲者が桁違いに増え、その結果、戦火はイラク全土に拡大をし始めた。昨日だか、自衛隊の宿営地に手製爆弾めいたものが投げつけられた、と言うのも、その辺の気配と無関係ではないと思われる。

万が一、アメリカらがこの作戦を誤り結果的に「国内政治的な戦い」にも敗れるような事があると、もはや手の施しようがなくなる事態に陥る。散々中東の秩序に無造作に手を突っ込んだ挙げ句、新たな秩序の形を提示するドコロか、新たな紛争の種を無造作に拡散しただけと言う、紛争の火薬庫の導火線に火を点けたまま、放り投げてしまう言う最悪な状況も考えられるのだ。そしてその危険性が高まりかけている。そうなった際のイラクは最早、新たな紛争の地雷原と化すのだ。自衛隊特別措置法が設定する事態とは全く掛け離れた状況となるのだ。アメリカのお気に召すまま自衛隊を送り込んでいる場合ではない。

あれほど自己責任論を述べていた人たちは何処に行ったのか?法律が設定している状況と今では天と地ほど離れている。それこそ責任を問いたい気分だ。あの時人質となった女性は、再びイラクの隣国ヨルダンに向かい、やりかけていた仕事を続けている。あの時ヒステリックに騒いでいたマスメディアの感心は、かの地アテネに飛び、イラクなどは画面にすら殆ど出てこない。このやるせなさは一体何なのだろうか?

私にはあの騒ぎの時に、あるテレビ局のキャスターが彼らに対して言った「無責任な行動を反省するべし」と、いう言葉が耳から離れないでいる。それこそフリーランスのジャーナリスト頼りで、あなた方が放棄した現場取材をしていた彼らに責任を問うのであれば、今危機的状況にあるイラクの現状を殆ど触れなくなった、あなたらの報道姿勢責任こそ、私は今この時点で改めて問いたいのだ。

  by mf0812 | 2004-08-10 04:31 | ニュース・評論

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