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日々雑感 ~マイ・マイノリティー・レポート

昼間、TARGETを弄りながらCSのTV5というフランスの放送を流し見していたが(私はフランス語が殆ど分からないので何を言っているかは知らないが)ニュース番組等ではワールドカップにおけるフランスの活躍、それにツール・ド・フランスとウィンブルドンの模様を延々と映していた(フランス語も分からないのにこのチャンネルを見ているのはツールドフランスの情報を知りたいから)全く北朝鮮のミサイル話は出てこない。どちらかというとニューヨークの地下鉄で起きた『リアル悪魔のいけにえ』事件の方に耳目は集まっているようである。

一方アメリカでも似たようなものでCNN等のニュース番組では、あくまでも画面のテロップでは「ミサイルテスト」という文字が踊っており、日本での受け止め方とは少々ドコロかかなり違う事になっている。因みにニューヨークタイムスは社説で「今回のミサイル発射実験は他国に直接的な脅威を与えていないし、国際条約にも違反していない。だから、アメリカやその他の国は、この発射実験によって北朝鮮を軍事攻撃する正当性ができたと考えることはできない」と書いている。

しかしここで指摘しておかなければならないのは北朝鮮は長距離ミサイルについては、1999年以来、アメリカや日本などに対し二度と発射しないと複数回にわたって約束している点だ。今回のテポドンの発射はこれらの約束を破ったことになる訳でこの点に関して北朝鮮は重大な瑕疵があるわけである。また社民党の保坂氏が指摘している様に今回の事件は「日朝平壤宣言」にうたわれた「ミサイル発射モラトリアム」に違反し昨年の6カ国協議で述べられた「北東アジア地域の永続的な平和と安定」に明白に背くもので、これも重大な北朝鮮の瑕疵である。アメリカにとっては対岸の火事であろうが日本の場合はやや違う。例えテストだとしてもだ。

ただ付け加えるなら短距離ミサイルについては日朝平壤宣言に書かれている「ミサイル発射モラトリアム」以外に制約がかかっていないのも事実で実際北朝鮮は毎年のように短距離ミサイルの発射実験をしており今年3月にも発射実験を行っている。この時はアメリカもそして実は日本もさほど大きな反発はしていない。アメリカ政府も短距離ミサイルの発射テストは、北朝鮮による約束違反ではないとしている。今回アメリカが問題にしているのは失敗したテポドンの発射のみであり、これらの点が国際社会の共通認識であるという事は押さえておきたい。

ここを前提とした上で今回の問題のポイントは何処になるのか私なりに推測したい。ミサイルが落ちた場所は日本海となっているが正確に言うならロシアのウラジオストクに近い排他的経済水域(200カイリ水域)の中に墜ちたというべきである。つまり北朝鮮は意思を持ちこの方向にミサイルを発射したわけだ。実は田中宇氏のレポートにもあるように北朝鮮がこの方向にミサイルが発射した時、丁度最寄の港であったウラジオストク港にはアメリカの太平洋艦隊の旗艦船であるブルーリッジ号が親善訪問のために寄港し、停泊中だった。因みにこのブルーリッジ号のウラジオストク入港は北朝鮮のミサイル警戒とは無関係で以前から予定されていた事だった。この日はアメリカ独立記念日ということで乗組員たちはウラジオストクで観光したりロシアと親善活動をしていたらしい。更に言うとこのブルーリッジ号は6月28日には中国の上海に親善訪問のために寄港しているた。上海への寄港は2年ぶりでこちらも以前からの予定だった。その数日前にはグアム島の沖合で始まった米軍の軍事演習に初めて中国軍の将官が10人招待されている。

日本のマスコミ情報では全く見えてこないがこのブルーリッジ号というのはアメリカと中国&ロシアの接近振りを示す最たるものなのであり、事実上東アジア地域の安定は米中露が一体となって協力して行こうと言うその象徴でもあるわけだ。北朝鮮が怖れたのはここである。因みに言うと実はこれこそが米軍の基地再編問題の本質で、東アジアの軍事外交において日本のイニシアティブなどはまったくない所か無視されているのが現状である。今まではまだ日本もどうにかアメリカの関連会社的な扱いで多少なりとは己の意見を発揮できたのであるが、この5年に渡る小泉政権下においてアメリカの完全子会社へと立場が変化してしまった。それに加えて靖国問題で日本は中国や韓国などアジア各国への政治的な影響力が皆無になった。つまりアメリカにとって今まで日本の価値は自分達の意見をアジアで代弁してくれるところにこそあったのに、日本が余りにもアメリカに追随した挙げ句にアジア各国とのパイプを己から切ってしまったたが故にアジアのどの国も日本の意見などまともに聞いてはくれない状況になってしまった

これによりアメリカは日本は使えないと判断したのか、日本をアメリカと一体化し始めた。まず米国は経済面において自国の意向を竹中という馬鹿を巧みに使い刷り込ませそして次には沖縄の基地問題にかこつけていつの間にか米軍のトランスフォーメーションを“我が国の予算”を使い行おうとしている。根拠のない巨額な移転費用が米国政府から次から次へと出てくるのがそれを端的に指し示している。

話をミサイル問題に戻すが、北朝鮮が怖れたのは今まで味方だと思っていた中国やロシアが急速にアメリカと接近している事でありこれら超大国に包囲網を作られそうな気配を感じ取ったからこそ今回の無茶な所業にでた、というのが私の見立てである。別に日本の事など彼らは全く気にしていない。軍事、外交的側面から見た場合でもアメリカもロシアも中国もそして北朝鮮も日本の事など最初からアウト・オブ・眼中なのである。実際アメリカは国連では一応日本の顔を立てて安保理での非難決議採択へ共同して動いている様に見えるが、その裏で北朝鮮問題担当のヒル国務次官補を北京に派遣してそこを拠点にして各国と連絡を取っている。ホワイトハウスのスノー報道官は「この問題に関しては主要な同盟国と協調し、北朝鮮を譲歩させるための外交的な解決方法を模索している」とのべているがここで言う主要な同盟国とは言うまでもなく中国でありロシアである。個人的な願望としてはその中に日本も含まれて欲しいと願いたいが、状況を見るに、我が国に対してアメリカはそう言う役割を一切期待していない。当たり前だ、中国とも韓国ともそしてロシアとも我が国のトップはここ数年まともな会談すら出来ていないのだから。

現在のアメリカ政権は北朝鮮との直接交渉を避けるため(=今のアメリカ政権は自国に直接利益が生じない紛争には全く興味がないしコストを掛ける気もないからだ)中国主導の6カ国協議への北朝鮮の再参加を実現すべく、中国への働きかけを即している訳である。

こうした米中露そして北朝鮮の動きを分からぬままに、我が国がどうこう叫んでみたところで無意味であるのは言うまでもない。外交とはお互いが国の利益を最大限に求めあう競争であり、軍事とはお互いがリスクを最小限度に食い止める競争である。そうした外交と軍事の区分けも出来ぬままに子供じみた事を言ったりやったりしては隣国とのパイプを己で断ち、盲目的に追随していた相手にはいつの間にか用無しと判断され下駄に挟まる雪の如くの扱いを受けている情けなさ。これが小泉政権5年間の答えである。

  by mf0812 | 2006-07-07 05:02 | ニュース・評論

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