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日々雑感   9/1 郵政民営化とは何なのか

いよいよ選挙戦が始まった。私が店舗を構える地元商店街は伝統的に政治とは距離を置くという素晴らしい方針が貫かれているので、変な騒ぎに巻き込まれなくて助かっている。選挙期間中は静かに過ごしたいので選挙戦初日である今日、選挙の争点であると言う郵政民営化に関して自分の考えを備忘録替わりに書いておこう。

市場経済の権化であるアメリカでさえ国営である郵政事業を民営化するメリットも分からないし社会保障の側面を持つ簡易保険を廃止する意義も分からない。因みにアメリカは郵政事業に毎年40億円もの補助金を供出している。

肩書きは公務員だけど人件費は業務内から捻出している郵政事業を民営化しても国から出て行く税金が減るわけでもない。そして既に公社化された段階で財政投融資の括りから外れている郵貯と簡保のお金を「民間」に流して活性化などというが、その「民間」とは一体どこなのかと言えば、それは言うまでもなく民間の金融機関であり、我々に還元される訳でない。彼ら特に大手の銀行は、ゼロ金利政策により本来なら国民に還元されるべきお金が彼らがこしらえた不良債権の償却に回し、未だに我が国の金利は限りなくゼロに近い。しかも大量なマネーを各銀行とも貯えているのにその金は我々に融資されることもない。日銀が買いオペしても札割れ状態が続き、一向に市中にマネーは流れず。しかし既に金を持っている富裕層へ金融商品を経由してジャブジャブとそうした余剰の資金は流れ、街中には一般庶民を狙った悪徳投資話が横行し、高金利の金貸し業者のCMが流れ続けている。外資系金融機関は民営化されるのを見越して日本の金融機関と提携を進め着々とその時が来るのを待っている。

本当に郵貯や簡保が結果的に民間の金融機関を圧迫しているのだろうか。いや金融機関を助けるために我々国民が圧迫を受けているのではないか、ゼロ金利政策で。そもそも郵貯簡保悪者論は財務省関係者が言い始めたのがキッカケであり大蔵族の小泉首相は財務省の代弁者とも言える。確かに旧経世会的な利益再分配的な土建屋国家的な政治経済システムを破壊したという点で小泉首相の果たした役割は大きい。そこへの評価は揺るがない。しかし彼の行っている究極の『二択政治』の行き着く先は、最終的に10%の勝者と90%の敗者で成立する息苦しい国家像であるのは容易に想像できよう。21世紀ビジネスモデルにおける勝ち組の典型である堀江氏が小泉政権を支持するのが何よりもその証左となるだろう。

しかし過剰な規制緩和によるインモラルな自由経済の最終系は、現在のアメリカの航空業界の悲惨さであり、それこそ国家規模で言うなら90年代の中南米でみられたアメリカ資本による地場産業の殲滅と国土の荒廃である。その結果が現在の中南米諸国の大半が反米左派政権で占められている状況となっている現実は、極めて暗示的だ。

そもそも今回政府与党サイドが提出した『郵政民営化法案』が本当に民営化法案なのか良く分からないというのもある。と言うのも今回の法案はJRやNTTの民営化の際に行われた地域分割をしない事を明示している為、サービスの比較・将来の相互参入を不可能にしている点、手紙・はがきの独占を温存ヤマト運輸日通等の民間企業の郵政事業への参入実現を事実上阻止し、あまつさえ全国一律サービス維持のための財政補助するという点(現時点で郵政事業に国は補助金を出していない)、更に言うと民営化当初からの持ち株会社が、会社成立後も郵便・郵貯・簡保・窓口ネットワークの4株式会社を一体経営し、国が将来も持ち株会社への3分の一超の出資を維持しつつしかもその持ち株会社は未来永劫に純粋な民間会社にはならないとした点などこれだけを以てしても、この法案の何処が民営化なのか全くもって理解に苦しむ。

シンクタンク「構想日本」では今の段階で財務省がキチント仕事をすれば半分の予算で国家運営を賄えるというシュミレーションを出している。小泉首相の言う『聖域なき改革』による財政健全化を目指すならば、郵政なんていう優先順位から言えば最後の最後に当たるものでなく、何よりも財務省改革こそが本丸であり、財政健全化に本気なら財務省改革を真っ先に叫ぶのが筋だろう。しかし今回の法案に入り口となる事業の会社化の法案はあっても出口となる預貯金の使用用途に関する法案は何処にもない。財務省にとって都合の悪い法案が出てこないのは偶然じゃあないだろう。

因みに90年代世界経済の現場で数々の修羅場を潜って来てその研究によりノーベル経済学賞を受賞した世界銀行主席エコノミスト兼副総裁であるジョセフ・スティグリッツ氏は、財政を健全化させる為の処方箋としてこのような言葉を残している。

「国民が痛みに耐えても、状況はよくならない 」

8/30記

  by mf0812 | 2005-09-02 06:31 | ニュース・評論

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