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華麗なる一族

華麗なる一族
佐分利信 / / 東宝
ISBN : B0002TT0RI
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テレビドラマ「華麗なる一族」がこの度放送を終えた。原作は山崎豊子、この話は、改めて言うまでもなく山陽特殊製鋼倒産事件事件をモチーフにしたものだ。主人公の万表鉄平は山陽特殊製鋼の再建に尽力した上杉年一氏がモデルともされている。この「華麗なる一族」は1974年に映画化されている、監督は名匠山本薩夫、主演仲代達矢というゴールデンコンビにより作られた。「映画斜陽の時代」と揶揄された1970年代、実はこの時代には映画評論家には見落とされがちであるが、素晴らしき日本映画が数多く作られている。この「華麗なる一族」もそして「砂の器」も「新幹線大爆破」といった世界に誇れる素晴らしき日本映画は、ほぼ同時代に作られている点を忘れないでいたいものだ。

山崎豊子、山本薩夫、仲代達矢の「華麗なる一族」のトリオで2年後に「不毛地帯」と言う名作も製作されているが、こちらの作品には名優丹波哲郎も出ていて、より一層作品に厚みを増させている。さて確かに仲代も山崎豊子映画の常連であるけども、やはり山崎豊子原作といえばまず真っ先に名前が挙がる俳優と言えば田宮二郎だろう。白い巨塔の財前教授役と言えば田宮二郎の当たり役であるが、とにかく田宮は、山崎豊子の作品群に惚れ抜いていて、白い巨塔のテレビドラマ化の際には何年にも渡り準備をし、山崎豊子を自ら口説き落として製作に漕ぎ付けたほどだった。

実はこの仲代主演の「華麗なる一族」には田宮二郎も出ているが、田宮は仲代が演じた(今回のテレビドラマ版では木村拓哉が演じた)万俵鉄平役を演じる事を熱望し、山本監督や東宝の名物Pである市川喜一に頼み込んだと言う逸話が残されている。残念ながら田宮の願いは叶わなかったが数年後、田宮二郎が躁鬱病の末に自殺を遂げた時のその様が正にこの「華麗なる一族」における万俵鉄平の死とオーバーラップしていたという。田宮は大映の天皇と呼ばれた永田雅一の逆鱗に触れ映画界から追放を受け暫く映画界から離れたが、大映倒産後に再び映画界に戻ってきてから、自死を遂げるまで立て続けに名作、傑作、快作に出続けた。生島治郎原作の「追いつめる」や、名匠増村と組んだ「動脈列島」、そして加山雄三と共演したハードボイルドの隠れた傑作「ジャガーは走った」など、その主演作品群は今もなを色褪せないでいる。惜しい人を亡くしたなと改めて思う事しきりだ。客数少ない店内でキムタクの自死のシーンをモニターで見ながら「田宮二郎が鉄平を演じていたらどうなっていたのかな?」とふと思った、そんな日曜の静かな夜であった。

  by mf0812 | 2007-03-20 03:46 | 映画・ドラマ

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