「冬の花火」 渡辺淳一

冬の花火
渡辺 淳一 / / 文芸春秋
ISBN : 4167145219
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渡辺淳一と言えば、今や日本で一番売れている官能小説家であるが、彼の初期の頃の作品は、本当に心に響く小説が多かった。中でも私が大好きな小説は「冬の花火」という天才との誉れ高かった女流詩人・中城ふみ子の短すぎるその一生を綴った伝記だ。この当時の渡辺の筆致は実に繊細でいて、優しさに溢れていた。戦後の混乱期に一瞬の輝きを見せた中城の、その心揺さぶる詩を随所に挟みながら、熱情に身を委ね心の赴くまま奔放に、そして大きな代償を払いながらも懸命に生きた彼女の「生」を肯定的に描く渡辺の筆力は、初読当時18,9の私には刺激的であり、文句なしに私を圧倒した。中城の生き方にそしてそれを描写する渡辺淳一に、私は大いに感銘を受けたものだ。

そんな才気溢れた小説家であった渡辺淳一も今や出来の悪い官能小説家である。昔からのファンとしては本当に残念でならない。別にエロに走る事を悲しんでいるのではない。肝心要なエロのシーンが全く面白くないから問題なのだ。何せ読んでいても全然勃たないんだから、ある意味官能小説としても欠陥だわね。まぁ女性向けに書かれているといわれればそれまでだが、この人の書くエロのシーンに艶が無いのは如何ともしがたく。まるでティーンエイジャー向けのハーレクインロマンスみたいな気の抜けたエロ小説ばかりを生み出し続けている割には、そのくせ私の好きな作家である古川日出男渾身の傑作である「ベルカ、吠えないのか?」が直木賞候補になった時など、その選評として「小粒な作品で、小説の域に達していない」等とほざいているのどうなんだという話である。才気ある人が才に溺れて枯渇していく様を見るのは忍びないものだ。
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  by mf0812 | 2007-01-10 02:47 | 書籍

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