『評決』
窓の外には枯れ葉が舞うバーの片隅。ワナワナと震える手でワンショットグラスでスコッチを引っ掛けてピンボールに興じる初老の男の姿。何の音楽も流れず、カメラはただ容赦なく男を写し続ける。何の台詞も、音楽もない、余りに簡潔なオープニングだけでその男が置かれている全ての状況を言い尽くしてしまう。幾千の文字を費やしても表しきれないその空気を一瞬にして映し出す映像の魔力。映画が文学に優る瞬間とは、こういう空間を指すのだろうか。
巨匠シドニールメット、主演ポール・ニューマン、『評決』のファーストシーンは、映画の魅力を存分に伝えてくれる最高の真実の瞬間である。
『評決』ってどんな映画?
ボストンの病院で起こった不正事件をめぐる裁判をきっかけに、教会と法曹界を相手に正義を貫こうと体を張る中年弁護士の、自らの立ち直りを賭けた男の姿を静かに描く法廷サスペンス映画。
エクゼクティブ・プロデューサーはバート・ハリス、製作は「JAWS・ジョーズ」のリチャード・D・ザナックとデイヴィッド・ブラウン、監督は社会派の巨匠のシドニー・ルメット。
バリー・リードのベストセラー小説を基に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」のデイヴィッド・マメットが脚色を担当した。主演の弁護士にポール・ニューマン、他にもシャーロット・ランプリング、ジャック・ウォーデン、ジェームズ・メイスン等芸達者の役者が顔を揃え重厚な雰囲気を醸し出している。因みにトリビアになるが若き頃のブルース・ウィリスがチョイ役で敵側の弁護士役として出ている。
by mf0812 | 2005-03-20 18:41 | 映画・ドラマ