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ダラスの熱い日

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その昔、ある詩人がピカソを評してこう言った「優れた画家は、作法や描かれる対象が変われど、そのトーン、つまり根底に流れているモノに変化は無い』これは犯罪でも同じであると私は思っている。時代が変わり、場所も違かろうとも、時折ある種の犯罪において同じ匂いを漂わせる事がある。

例えばこの間の福岡で起きた一家4人惨殺事件と未解決決事件である世田谷一家惨殺事件がそんな感じを漂わせている。別に同一犯と言っている訳ではないが、犯罪のトーンが同じである気がしてならない。私は一介の素人であるのでこれ以上両事件の比較をするのは避けるが、これと同様に過去に起きた大事件でもそのような「匂い」を感じる事が時折ある。

私が卒業できなかった大学で卒論として書き上げた(残念ながら未提出のまま大学は辞めた)テーマはJFK暗殺であった。時の現役大統領がパレード中、何者かに射殺されると言う事件は、古びたライフル銃1丁が凶器とされ、うだつの上がらない二重スパイのオズワルドの単独犯行という「お粗末」な結論で事件は事実上終結した。

私が今回のイラク戦争に感じる「匂い」は、30年以上前にあったJFK暗殺事件に漂う「匂い」と共通している。これ以上の推測は推測でしかないので言葉は繋がないが、今アメリカで行われている9.11テロ事件の公聴会で述べられている政府高官の信じがたい証言を聞いていれば、何故テロが起きたのかそしてイラク戦争が起きたのかが、おぼろげながらアメリカ国民に伝わるのかもしれない。ただ日本同様アメリカのメディアもこの問題への追及は非常に甘い。あのワシントンポストでさえ及び腰である。それは自分たちがまんまと騙された事への罰の悪さなのか、それとも…。

その昔、ある手品師に聞いた印象的な話を思い出す。「子供騙しって言葉があるでしょ。ホントに子供を騙すのは簡単なんですよ。でもね、子供は一度騙されたと分かると2度と信じてくれない。どんな手段を使ってもね。ところがオトナは騙されにくい代わりに、一度騙されると、騙されたことを何度か感づかれても、信じた自分を否定しづらいので、そのまま騙され続けやすい。だからオトナのほうが、騙すのは簡単なんです。子供を騙す時ほど神経を使う時は無いですよ」

その言葉どおり我々オトナはいとも簡単にアメリカやイギリス、そして日本政府の嘘に騙された。しかし騙されたとは分かっていても、騙された自分を認めたくない否定できない、それ故に無理矢理な理屈を見つけて自己を正当化する。その結末が今のイラクの騒乱状態だ。残念ながら小泉がよく言う国際社会とは=アメリカのみの世界であり、イラク復興支援とは、ベクテル・コンツェルンの営業活動に協力する事と同意である。

テロでなくゲリラ戦状態が始まったイラクの現状。ベトナムと同じだと漸くアメリカのメディアも騒ぎ始めたが、例の国連における大量破壊兵器を証明したパウエル演説(最近になってパウエル自身があの演説で話した内容は間違っていたと、トンでもない事実を公表しているが、日本ではそのニュースは殆ど流れていない)の頃からそんな事は分かっていたのだ。JFKの時代からアメリカは何も変わっていない。軍産複合体とクリスチャン・コアリション(狂信的キリスト教保守主義者)の危険な握手。アメリカは経済が疲弊してくる場合か異文化の集団から自国文化を否定された時、どこかしらか必ずこのような図式が顔を出してくる。

今のイラクで今起きている、そしてこれから起こるであろう事は、GHQ管理下の日本で起きた事と類似してくるだろう。現に日本人外交官射殺事件では相当に怪しげな事実がポロポロと出てきている。戦後間もない日本でもスパイ小説さながらの出来事が起き続けたが、『彼ら』の手口は、場所や時代が変わっても、そのタッチに基本的な変化は無い。

その根底に流れるタッチとは何か?占領下の日本では例えばそれが「下山事件」であり「三鷹事件」「松山事件」となった。傍流ではあるが「帝銀事件」も同じ流れにあるだろう。因みに下山事件を探っていくと、JFK暗殺との類似点の余りの多さに驚くことになる。国も時代も場所も違えど「謀略」というべきものが行われる時のその事件から漂う「匂い」は何時の時でも同じである。

ムヤミヤタラナ謀略史観は歴史を歪めてしまう危険性を孕むが、「正しく行われた謀略」は、その全体像を誰にも気付かれずに静かに始まり静かに終わるものである。

この映画「ダラスの熱い日」はオリバーストーンが監督した「JFK」の20年程度前に独立系プロダクションで制作された逸品である。JFK暗殺の全体像を掴むには非常に優れた作品であり、しかも映画としても一級の政治サスペンスである事を保証する。バートランカスターにウィルギアなど俳優達の重みある演技も抜群である。

同様にアメリカ諜報機関が関係した事件を取り扱った日本映画としては、熊井啓が監督した「日本の熱い日・謀殺下山事件「帝銀事件・死刑囚」などがある。何れも今の映画界ではナカナカ作る事の出来ない力作で、社会派監督熊井啓の名を世に轟かせた大問題作である。特に下山事件に関しては、相当真実に近いラインの話を構成している様だ。最近出版されて話題になっているドキュメンタリー映画監督の森達也が書き下ろした「下山事件」等、ここに来て漸くこういう事件が日の目を浴びると言うのも決して偶然ではないだろう。

この間残念ながら亡くなられた俳優の中谷一郎氏と言えば世間では水戸黄門の風車の矢七であろうが、私にとっても中谷一郎氏は、岡本喜八監督作品でも強烈なバイプレイヤーとしての存在であり、一連の熊井監督作品における重い演技を軽くこなす役者さんであった。

名脇役の死を悼みつつ、関連作品を紹介させて頂いた。

  by mf0812 | 2004-04-10 04:23 | 映画・ドラマ

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