プロレスの行方 第2回 混沌の不条理劇

坂口体制の割を食い己が引く事になった「神・アントニオ猪木」が起死回生の逆転技を発動した1,4橋本小川事件以降、新日の迷走が始まった。相次ぐ中心選手とフロントの離脱でエース選手が不在となった新日本は藤田和之という稀有な成功例に一縷の願いを託し「総格ワープ」を使い格闘技のリングで選手の格上げを図り失敗を続けてきた。

しかし去年のG1でノアの秋山を招聘し自団体のリングでプロレスの試合を通して天山の格上げに成功した。これは新日に取り久し振りの大ヒット企画だった。これでやっとエース格の選手が出来たなと思っていた矢先に悲劇が待ち受ける。9月に名古屋の大手プロモーター共同企画の記念興行を猪木がドタキャンしたからドエライ騒ぎに。新日としては一番信頼を得なければならない地方のプロモーターの顔に泥を塗るような事があっては将来に禍根を残す。そこでこの事態を収拾するために大阪で高山と少々因縁が出来た坂口CEO、つまり荒鷲参戦という事態になった。この記念興行に秋山が力皇を引き連れ参戦したのも、チケット的にダメ押す意味もあり土壇場になりプロモーターの要請もあって新日からノア側にオファーがあったからである。

ところがこの騒ぎに息子の憲二までもが担ぎ出されたのでさぁ大変。テレビや女性週刊誌まで含めた一大狂騒曲となり、世間的に注目を集めてしまったが故にこのキワモノ路線を押し進めてしまった。その結果が去年の秋のドーム大会であり、残念ながら世間の騒ぎと反比例した会場は観客が埋まらず興行としては苦戦。そして結局は、天山エース路線は霧消し、年末には懲りずに再び「総格ワープ」作戦を発動し中邑柴田がその役を担った。 その集大成が5月の東京ドーム大会であったが、この大会は新日本の東京ドーム大会で史上最低の実券売り上げを記録し、この路線の難しさを露呈した。

そして、今年の秋。当初失敗が続くドーム大会を新日上層は回避を狙っていたが、猪木周辺が売上高の減少を嫌い、土壇場で突如開催決定。そこで新日の頭脳であった上井氏辞職後、合議制に変更となった新日マッチメイカーらは考えた。

7月にあった直近のドーム大会。そうノアのドーム大会の大成功を見ていた新日幹部はオポジション団体をノアにセットした筈なのである。現に世界の荒鷲・坂口氏は、試合があった直後の朝礼で社員にこのノアドーム大会を見せて、ウチもこの大会に負けないようにしなければならないとハッパをかけたのは有名な話である。そうした答えが、ノアに対抗しうる手段として、現段階のノアには絶対に出来ないヘビー級選手による未来のエース対決として将来の新日版小橋秋山的な意味合いを目指す上で、若手のホープ中邑棚橋戦を敢えてメインに据えた筈なのである。

しかも偶然に、同日ノアは後楽園で、ノアの未来を託すカードとして現在のジュニア最高峰選手である丸藤KENTA戦が行われる事が決定した。図らずも正にプロレスの未来はどちらが輝かしいかを競えるシチュエーションになったのだ。珍しく新日が試合内容で勝負を賭けたドーム大会のメインとなった。その心意気を私は買った。荷が重そうだと分っていても試合内容で勝負しようというその心意気や良し!と思ったのであった。

が、事態は急変する。

川田、長州参戦とカードを発表しても全くチケットが動かない大阪ドーム大会。自らの冠大会である猪木は焦った。そもそも10月の両国、11月にも両国大会を企画し、共に観客動員で結果が出なかった新日にこのタイミングでドーム大会を行えるスタミナが無かったという前提がある。しかし猪木にとってこの大会の失敗はいろいろな意味で許されなかった。そうした焦りは、こちらが思っている以上だったのかもしれない。土壇場でマッチメイク権が新日から猪木事務所に変更され、いつの間にかそのマッチメイク料が猪木事務所に送金される事態となり、大会3日前にカードは変更された。メインセミのカードが吹き飛び、小川が参戦、幾ら話題性が欲しいとは言え、30年以上この業界で大手として君臨している会社のするべき行動ではないのは言うまでもない。

しかも挙げ句に結局、実券で1万枚に満たないという興行的に大惨敗を喫した大阪ドーム大会は、視点のないごった煮感覚満載の最近見慣れたドーム大会の景色になっていた。一寸先はハプニングとは猪木の名言だが、今回の騒ぎはハプニングでない。意図的な猪木事務所による資金確保の動きの強い悶着である。新日上層部にとって手打ち興行でこの失態は痛恨の極みであろう。本来ならこの日行われた試合に対して一つ一つコメントするのも筋なのであるが、この大会の本当の意味は、当日の試合結果よりも、これからに懸かっている。

このドーム後遺症が如何様に出るのか。その答えが早くも次期シリーズには判明するであろう。開催過多になり熱の維持が難しくなっている後楽園での興行、既に熱を失い始めた両国での興行。新日は日本武道館での興行から手を引いており、実は今、都心の大会場で確実に動員を計れるのは東京ドームしかなくなりかけているのである。そんな状況で次期シリーズの開幕戦である後楽園の連戦がコケたら、それこそ一気に興行的にメルトダウンを起こしかねない緊急事態となる。

ドーム大会として珍しくメインカードに意味を持たせた筈だった新日大阪ドーム大会は一度は照準を合わせかけたオポジション団体の設定を最終的に間違えたまま、その大会を終えた。同日のノア後楽園では丸藤とKENTAが、正にノアの、プロレスの未来を魅せた素晴らしい試合を繰り広げた。一方大阪では未来を賭けて対決するはずだった中邑と棚橋が敗れるとこれ以上無い不条理を見せ付け大会はカオスのまま終った。

今一度警告したい。今回の新日の危機は、過去の騒動や騒ぎとは一線を画している。日常の興行を追いかけている人間ならばその切迫した感じはお分かりいただけると思う。兎にも角にも来週ある日曜と月曜の新日後楽園ホール大会は試合内容もさることながら観客動員にも注目をしたい。万が一8割にも満たない動員しか出来なかったならば…。1月にドーム大会ヤルどころの話ではなくなってしまう。今、新日は危険水域に突入した。
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  by mf0812 | 2004-11-18 06:02 | プロレス格闘技

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